モチベーション3.0とは?自ら動く社員を作る内発的動機
モチベーションは普段からよく使われる言葉です。モチベーションは、「やる気」と訳しても間違いはないでしょう。しかし今、多くの経営者やマネジャーにとって、社員のモチベーションは悩みの種になっています。生産性とモチベーションには深い関係があるからです。
また、モチベーションに関する研究も古くから行われています。2009年にアメリカで発売された本のタイトルに「モチベーション3.0」という言葉が登場しました。この記事ではモチベーション3.0の特徴と、モチベーション3.0以前のモチベーション2.0などの違いなどを紹介します
目次
モチベーション3.0とは
「モチベーション3.0」は、アメリカでビジネス関連書籍を多数書いているダニエル・ピンク氏が著書『モチベーション3.0 持続する「やる気」をいかに引き出すか』で提唱した概念です。ダニエル・ピンク氏はアメリカのアル・ゴア副大統領のスピーチライターを務めました。また、世界的に有名なTEDに登壇したこともあります。
なお、『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』の日本語版は、経営コンサルタントの大前健一氏によって和訳されています。
ここから、モチベーション3.0が注目される背景や、モチベーション3.0の特徴をみていきましょう。
モチベーション3.0が注目される背景
現代社会では、モチベーションを維持することが困難とされています。一方で企業は、モチベーションの高い人材を求めています。現代社会は経営環境の変化が速く、指示されたことをこなすだけの社員ではなく、自律的に行動できる社員が必要なためです。
また、このような不確定要素が多い時代には、自律的な社員がいないと競争に負けてしまうと考えている経営者も少なくありません。
モチベーション3.0の特徴
現代社会は、高いモチベーションを維持することが困難だといわれています。社会や組織が複雑化して、自分の行動が成果として目に見える形でアウトプットされにくくなっているからです。
一方、企業はモチベーションの高い人材を求めています。現代の経営状況は変化が速く、指示された仕事をする社員だけでは対応できません。そのため、モチベーションが高く、自律的に考えて行動できる人材が求められています。
モチベーション3.0は、このように変化の激しい時代に必要とされるものです。強くて柔軟な組織を作るために必要なモチベーションの考え方です。
このモチベーション3.0は「内発的動機付け」と言い換えられます。自分の中から湧き上がってくるような動機付けです。
心理学に「フロー」という用語があります。「その行為自体が非常に楽しいので、純粋にその行為のために多くの時間や労力を費やすような状態」です。モチベーション3.0や内発的動機付けは、ちょうどこのフローに似た状態です。
仕事において、モチベーション3.0や内発的動機付けが高まってくると、このフローのような状態になります。仕事にやりがいを感じているから、さらに創意工夫して仕事をする状態です。
モチベーション3.0は、その人の内側から起きる内発的動機付けです。モチベーション3.0には3つの特徴があります。
自律性
自律性とは、仕事の課題解決を他人任せにせず、自ら主体的に課題解決に向けて行動できることです。
成長(熟練)
成長とは、課題や仕事を通じて、自ら自分の能力を高めようと行動することです。また、経験を積み、上達したいという欲求も持つようになります。
目的
モチベーション3.0でいう目的とは、単なる個人的な欲求ではありません。自分の仕事を通じて社会や組織に貢献したい・社会をよくしたいといった利他的な目的です。
モチベーション2.0などとの違い
ここまでモチベーション3.0について説明してきました。もちろん、モチベーション3.0以前には「モチベーション1.0」「モチベーション2.0」と定義されるものがあります。
ここでは、モチベーション1.0・モチベーション2.0について紹介します
モチベーション1.0
モチベーション1.0は「生理的動機付け」のことです。生理的動機付けとは空腹を満たしたい、子孫を残したいという根源的なモチベーションです。
技術や文明が発達し高い生活水準にある先進国では、すでに生理的動機付けは満たされた状態にあります。そのため、モチベーション1.0は有効に機能しません。また、モチベーション1.0は、人自身の生存を維持するための動機付けなので、ビジネスの上では使えません
モチベーション2.0
モチベーション2.0は「外発的動機付け」です。「給料が上がるので仕事をしよう」「昇進するために働こう」「上司から叱られたくないから仕事をしよう」といった外発的動機付けです。よくアメとムチにたとえられます。
モチベーション2.0は外発的動機付けで、絶えずインセンティブを与え続けることが必要です。しかし、給料や出世によるインセンティブには限界があります。また、処遇によるインセンティブを与え続けられないことが社会の現状です。
さらに、外部から目標をインセンティブとして与える続けると、与えられた目標を達成することだけが得意な社員に育ってしまいます。そのため、自律的な社員が育ちにくいという構図ができてしまいます。
モチベーション3.0を取り入れて自律した組織へ
モチベーション3.0は、私たちW-Insightが使う「内発的動機付け」と同じ意味です。そして、自律した社員・自律した組織を作る目的も一緒です。
現在の日本経済は低成長・安定成長といわれています。かつてのように給料や昇進をインセンティブにすることが難しくなりました。また、そのような外発的動機付けで目標は達成できても、社員に与えた目標以上の成果が望めないこともわかってきました。
現代社会のように変化の速い時代は、自分自身で判断し、行動できる社員が必要なのです。そのような社員を作るためには、外発的動機付けよりも内発的動機付けの方が効果的なのです。
また、自分の中にある価値観に基づいて働き、周囲もその価値観を尊重するとき、人は真の「充足感」や「やりがい」を感じます。この状態は企業にとっても、社員にとっても、最高の状態といえるでしょう。
私たちW-Insightは、さまざまな職場で社員の価値観サーベイを行っています。経営者にとっても、社員にとっても「充足感」と「やりがい」を感じられる職場づくりのサポートをしています