メタ認知ができると問題解決能力が高い?わかりやすく解説します
最近、よく耳にする「メタ認知」とはなんでしょうか。また、メタ認知ができる人は問題解決能力が高いといいますが、本当でしょうか。この記事ではメタ認知について、メタ認知の起源から詳しく解説。メタ認知能力が高い人とメタ認知能力が低い人の違いも紹介します。
また、メタ認知能力を高める「セルフモニタリング」の方法や自分が気付かずに認知に影響を与えている「認知バイアス」についても説明します。ぜひ、最後までご覧ください。
目次
メタ認知とは?
メタ認知とは、自分の認知や行動を客観的に把握することです。さらに認知したことについても、制御することをいいます。このことから自分が何かをしている時に、自分の頭の中に「もう一人の自分」がいると表現する人もいます。
メタ認知の起源
メタ認知は、1976年にアメリカの心理学者ジョン・H・フラベルが「メタ記憶」を定義したことから生まれました。その後、後進の心理学者が「メタ理解」「メタ注意」と研究を進化させ、これらによって「メタ認知」の研究が発展していきました。
メタ認知は異文化間で共通して見られることがわかっています。それはメタ認知が人間生活において、普遍的に関わっていることを示す証拠です。
メタ認知に関する古い記述には、ギリシャ時代の哲学者アリストテレスの「自分を知ることは、すべての知恵の始まりである」という言葉。他にもソクラテスの「自分自身が無知であることを知っている人間は、自分自身が無知であることを知らない人間より賢い」という言葉も残されています。
「自分自身が無知であることを知らない人間より賢い」という言葉も残されています。
「メタ」の意味
ところで、「メタ認知」の「メタ」とはどういう意味でしょうか。
「メタ」はギリシャ語「meta」に由来しますが、心理学でいう「メタ」とはより高次のという意味で使われます。上記で説明した、頭の中に「もう一人の自分がいる」という状態です。自分が認知していることを、より高次の自分が客観的な立場からコントロールしている状態です。
メタ認知能力が高い人とメタ認知能力が低い人の違い
それではメタ認知能力が高い人と、メタ認知能力が低い人にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、メタ認知能力の高い人の特徴とメタ認知能力の低い人の特徴を比較してみましょう。
メタ認知能力が高い人
メタ認知能力が高い人は、自己分析力が高いので、以下のような特徴があります。
- リーダーとしての素養がある
メタ認知能力が高い人は、周囲と自分の距離感や立ち位置を把握しています。そのため、周囲との協調性が高く、周囲の人をまとめるリーダーの素養があります。
- いつでも冷静な判断ができる
予期せぬトラブルが起きても冷静に対処できます。また、たくさんの仕事を抱えていても優先順位をつけて仕事を進めるので高い成果を上げられます。
- 考え方に柔軟性がある
メタ認知能力の高い人は考え方に柔軟性があります。仕事でミスしても、そのミスから学べます。また、現代はインターネットをはじめさまざまなテクノロジーが急速に進化しています。今までのやり方に固執せず、新しい効果的な方法を受け入れられます。
- 分析能力が高い
メタ認知能力の高い人は当然分析力が高く、客観的に自分自身を捉えています。自分の長所や短所は何か。自分の言動はどんな影響を周囲に与えるかなど。この高い分析力は、さらに自分自身を成長させます。
メタ認知能力が低い人
メタ認知能力が低い人は、自分が周囲からどのように感じられているかなど、自分の立ち位置を客観的に把握できません。また、メタ認知能力が低い人は、自己中心的な思考にとらわれる傾向があります。そのため、常に自分が正しいと思い込んでしまう危険性があります。
たとえば上司から仕事の進め方について注意された時、仕事の進め方ではなく「自分は上司から嫌われているから注意された」と考えがちです。
メタ認知能力を高くする方法
メタ認知能力を高くすれば、仕事だけでなく人間関係もよくなります。ここではメタ認知能力を高める手法の一部を紹介します。
セルフモニタリングする
セルフモニタリングは自分が無意識下で行っていた行動や考え方を観察するトレーニングです。そして、その時の「状況」や「考え方」、「気分」、「行動」などを紙に書き出します。紙に書き出すことで自分自身のことを客観的に捉えるのです。
そのあとは紙に書き出した自分の行動を図などを使って整理し、改善していきます。ケースによっては専門家の力を借りて改善する方法もあります。
認知バイアスを知る
認知バイアスとは、これまでの経験などによる先入観により、非合理な判断をする心の動きです。認知バイアスにはさまざまなものがあります。中でも有名なものは「正常性バイアス」です。
たとえば大きな災害が起きた時に避難をせず、「まあ、自分は大丈夫だろう」と考えるように感じることです。実際に災害ではこの正常性バイアスで多くの被害者がうまれています。
メタ認知を考える時、重要なことは自分自身が認知バイアスの影響を受けていると常に意識することです。認知バイアスの影響を受けないようにすることは難しいことだと思います。しかし、自分の考え方にバイアスがかかっているかも知れないと理解すれば、選択肢は大きく広がります。
認知バイアスの仕組みを理解すれば、職場の意見の食い違いも理解できるようになるでしょう。同じものを見ても、AさんとBさんとCさんは違うものを見ている可能性があります。それは、AさんとBさんとCさんの認知バイアスを形成してきた経験などが違うからです。これを理解するだけでも職場の意見の相違で悩むことは減ります。
メタ認知能力の高い人の問題解決能力が高い理由
メタ認知能力の高い人の問題解決能力が高い理由は、周囲の人と自分の距離感を適切に把握できることによるところが大きいでしょう。
厚生労働省の労働者健康状態調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/anzen/kenkou07/r1.html)によれば、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレス」の調査で、「職場の人間関係の問題」にストレスを感じている人が、男性30.4%、女性50.5%と高い割合でストレスを感じています。
職場の問題の多くに人間関係が関わっています。メタ認知能力の高い人は、職場メンバーと適切な距離感を保ちながら仕事ができるので、問題解決能力も高いでしょう。また、周囲との協調性も高いので、将来のリーダーになる素養もあります。
メタ認知能力の高い人は、変化のスピードが速いこの時代において、冷静に客観的な判断が可能です。また、現状を認識して、最新ツールの導入を検討するなど柔軟な考え方もできます。
しかし、メタ認知能力の低い人もあきらめなくても大丈夫です。メタ認知は後天的にも能力を高められます。上記にセルフモニタリングを一例としてあげましたが、メタ認知能力を高めるトレーニングは数多くあります。ぜひ、自分にあったメタ認知トレーニングをして、メタ認知能力を高めてください。
W-Insightでもメタ認知トレーニングをしています。とくに職場の人が認知バイアスを認識していないと、イノベーションのチャンスを失いかねません。そのため、メタ認知と認知バイアスを組み合わせてお伝えしています。ご興味がおありの方はぜひ、お問い合わせください。