部下が育つ企業組織風土を創る!それが上司の大きな役目
株式会社セレスが20歳から59歳までの男女890人に行った調査があります(※1)。この調査によると、職場の部下に不満があると答えた人は全体の54.6%でした。約半分強の人が部下に対して何らかの不満を抱えて仕事をしていることになります。しかし、その一方で多くの上司は部下を育成したいと考えているでしょう。
この記事では、今の時代においてどうすれば部下が育つ企業組織風土を創れるのか紹介します。ぜひ、最後までご覧ください。
目次
企業組織風土の変化
現在、企業で役員やマネジメントに関わる仕事をしている人の多くは、バブル経済の頃に新卒一括採用をされた人が多いのではないでしょうか。バブル経済の後の日本経済は、低成長もしくは安定成長になりました。この日本経済を「失われた30年」ともいいます。
マネジャーをされている方がプレイヤーの時に経験したバブル経済の頃の雰囲気と、今の社会の雰囲気は大きく違います。以前の日本は正社員・終身雇用が当たり前でした。現在は正社員の他、派遣社員など非正規雇用も増えてきました。また、雇用も流動化して、中途入社も当たり前のようになっています。
企業組織の風土は、無意識に各個人にすり込まれている暗黙知です。企業経営や雇用形態、社会の変化は、企業組織風土に大きな影響を与えています。そして、仕事に対する考え方や仕事の手段などにも変化が生じています。下表で企業組織風土の変化をまとめました。
項目 | 従来の企業組織風土 | これからの企業組織風土 |
---|---|---|
マネジメント風土 | 上意下達・指示命令型 | 発言しやすくイノベーションのある環境づくり |
コミュニケーション風土 | 一方通行(指示・命令・連絡型) | 双方向(情報交換・相談・知恵出し) |
伝達効率 | 上下ライン・職制ルート経由 | 意味・目的・背景を共有 |
情報流通 | 上下間・部署間の障壁が大きい | バリアフリーのコミュニケーション環境 |
人的ネットワーク風土 | 職制・役割に基づく連携 | 目的・想い・共感に基づく連携 |
思考・判断風土 | 指示に従い動く | 自ら考えながら動く |
目的風土 | 与えられた目的に従い動く | 目的を社員が考え、行動する |
イノベーションのアウトプット | 低い | 高い |
パフォーマンス | 指示・ルーチン業務の処理のみ | 新たな「知」や「価値」の創出 |
企業組織風土とは
企業組織風土とは、企業で働く人の考え方や文化に影響を及ぼす、その組織独特の環境のことです。目には見えませんが、その企業で働く人の行動に大きな影響を与えています。この企業風土を構成する要素は、ハード的な要素とソフト的な要素があります。
ハード的な要素
企業組織風土におけるハード的な要素とは、明文化された会社のルールなどです。代表的なものとしては、以下のものがあります。
- 企業理念
- 社是
- 社訓
- 組織体制
- 経営方針
社員は仕事をする上で、これらのルールを守ることはもちろん、自然にその価値観から影響を受けます。
ソフト的な要素
ソフト的な要素は目に見えないものです。そこで働く人の価値観や関係性などで構成されます。
- 職場の人間関係
- 社員の価値観や行動様式
- 明文化されていない暗黙のルール
ソフト的な要素は、それぞれ単独で影響しているだけでなく、複雑に絡み合い企業組織風土を作り上げています。離職率の高い職場では、ソフト的な環境の問題がほとんどです。職場の人間関係が悪いことに起因する社員の満足度の低下などが原因です。
そして、ソフト的な企業風土は社員一人ひとりの内面の価値観がベースにあるので、簡単に変えることはできません。
部下が育つ企業組織風土にするためには
前述の表で紹介した「従来の企業組織風土」と「これからの企業組織風土」を比較して、これからの時代にマッチしている方は後者の方と考える人がほとんどでしょう。そして、この項目が何らかの形で職場のコミュニケーションに関係していると気付かれたと思います。
企業組織風土は長い企業活動の中で形成されたものです。そのため、短期間で変えることは難しいでしょう。しかしもし、今の企業組織風土が時代や社会に合っていないのであれば、変える必要があります。
企業組織風土は人の習慣と似ている部分があります。悪い企業組織風土を変えるには時間が必要です。しかし一旦、よい企業組織風土を創り上げれば、企業に対して持続的によい効果をもたらします。
対話を引き出すマネジメントが部下の育つ企業組織風土を創る
企業組織風土の形成にコミュニケーションが与える影響は少なくありません。その企業組織風土を変えるには、「トップダウン」と「ボトムアップ」のアプローチがあります。長期的には社員が主体的に関与できるボトムアップが求められます。しかし、最初はトップダウンの号令が必要です。それができるのは役員やマネジャーだけなのです。
従来の部下の指導はOJTや集合教育が中心でした。もちろん、これからも必要な教育です。また、従来は「決められた仕事を遂行できる」ことが人事評価の軸でした。しかし、これからはVUCA(※2)の時代。今までのやり方が通用しない、または新しい考え方が要求される時代です。
そんな時代で求められるのは、自立・自律した社員です。評価する軸も「決められた仕事を遂行できる」から「目標達成のため、自ら何ができるか考えて行動できる」に変わるでしょう。そのためには、上司と部下がお互いの価値観や考え方を理解し、共有しておく必要があるのです。何が求められているのか「意味」を共有することが重要です。
そのような背景もあり、1on1ミーティングを導入して上司と部下が対話する機会を増やす企業が増えています。1on1ミーティングでは、具体的な仕事のやり方を部下に教えるのではありません。部下の話や考え方を引き出す力が上司に求められるのです。
W-Insightでは、1on1ミーティングなど対話を効果的に行うための「対話型コーチングスキル養成プログラム」を提供しています。対話は、知識やスキルだけでは実務に活かせません。そのため、この養成プログラムではセミナーとワークショップ、その後の反復練習によって徐々に力を身につけていくものになっています。
部下が育つ企業組織風土文化を創るためには、まず、上司と部下の対話が必要です。対話により、上司と部下がお互いの価値観や価値観の違いを知ること。お互いの価値観を尊重していくことで、何でも提案できる心理的安全性の高い職場ができます。
そして、このプロセスを繰り返していくことで、部下の育つ企業組織風土ができるといっても過言ではないでしょう。
最後までご覧くださり、ありがとうございました。
※1【部下・後輩に関する調査】半数以上が部下や後半に不満を持っている結果に(モッピージョブ調べ) | 株式会社セレスのプレスリリース
※2 VUCA……Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べた言葉