共感力を養うために必要なもの
「心理的安全性」という言葉が注目を集めています。注目を集めている背景にはGoogleが分析し、発表した次のことです。
「重要なのはチームのメンバー構成よりも、チームの協力体制がどのようなものかである。その協力の方法の中で圧倒的に重要なのが心理的安全性である。
また、心理的安全性が高いチームは離職率が低く、収益性が高い」
その後、多くの企業が心理的安全性の高いチーム作りの取り組みを開始しました。心理的安全性が高いチームを作るには、まず、チームメンバー同士が共感しあえる環境を作る必要があります。チームメンバー一人ひとりの共感力を高めることが重要になります。
目次
共感力を磨くためには「気づき」が必要
一人ひとりの共感力を養うには、一人ひとりの「気づく力」を鍛える必要があります。それは必ず、共感のステップの前にあるのです。
まず、気づいて欲しい相手は「自分自身」のことです。人は自分自身について知っているつもりですが、案外と知らない面があります。それは心理学でいうジョハリの窓の「盲点の窓」や「未知の窓」でも明らかになっているとおりです。
自分の考え方を当たり前だと思っていても、無意識のバイアスがかかっていることもあります。また、自分自身の価値観が言動に大きな影響を与えているかも知れません。自分を客観的に把握することを「メタ認知」といいますが、まず、自分に気づくことが大切です。
次に気づいて欲しい対象は、チームメンバーである「相手」です。まず、相手に興味をもつところからはじめる必要がある人もいるでしょう。興味をもたないと、見えるものも見えてきません。
相手に興味をもち、考え方や価値観を理解すれば、自分との違いが見えてきます。この考え方の違いがあることを知ることだけでも、チームのコミュニケーションは大きく変わってきます。
次に気づいて欲しいのは、チームそのものです。さまざまな考え方や価値観をもったメンバーが高い成果を出すためには、チームに対する気づきも大切なのです。終身雇用制が崩れはじめ、中途入社の人や世代が違う人が同じチームにいることも増えてきました。その中で自分の「当たり前」が当たり前ではないことに気づいていけば、チームメンバーに共感できるようになります。
共感力は双方向のコミュニケーションです。自分を大切にすると同時に、相手やチームも大切にする。このような姿勢が心理的安全性の高い職場を作ることになります。
この点から私たちは、『共感がなければ、本当の意味での「充足感」や「やりがい」は得られにくい』と考えているのです。
気づきが求められる背景
ダイバーシティは「多様性」を意味します。そして、インクルージョンは「受容」です。近年、ダイバーシティ&インクルージョンとして一緒に使われる場面も多くなりました。日本語にすれば、「多様な人材を受け入れ、それを認めて、それぞれの人材の能力を活かしていく」という意味になるのではないでしょうか。
日本においては少子高齢化が進み、生産年齢人口(15~64歳の人口)は減少するばかりです。そうなると企業は従来のような正社員だけでなく、多様な人材を確保することが求められるようになります。
一方、マーケットも成熟して顧客ニーズも多様化してきました。そのように多様化したマーケットに対し、多様化した人材をもつ組織は強いのです。
ハーバードビジネススクールのリー・フレミング氏による「ブレークスルーの関係性」の研究は、「組織に多様性があるほどブレークスルーを生み出しやすい」と示唆しています。つまり多様性があることは組織にとってプラスに働くのです。
しかし、前述の「ダイバーシティ&インクルージョン」。まず。お互いの違いを「気づき」「受入れ」「認めあい」「活かす」ことが必要です。それにより働きやすいチームや社会ができ、結果的に生産性も高まるのです。
気づく力で得られるもの
前述の通り、知っているようで知らないのが自分自身です。まず、自分自身の言動に気づくことが大切になるでしょう。次に相手に興味をもつこと。興味をもって見ないと、見えてこないことはたくさんあります。相手と自分の考え方を理解して、受け入れることが大事です。
そして、日本企業もこれからは、採用方法も働き方自体も多様化してくるでしょう。この組織の多様化の中で気づいて、お互いに共感しあえるような関係性になれば、心理的安全性も高まり、働きがいのある職場になっていきます。
まずは、自分・リーダーから、相手、そしてチームへと気づきの輪を拡げていきましょう。